第1回 −心のエネルギーについて−
物理学が物質の理(ことわり)を追究する学問であるのと同じように、心理学は心の理を追求する学問です。
その心理学が、物理学や生物学の強い影響を受けて発展したものであることをご存知でしょうか?
「心理学と言えば、=何やら人情的、直感的、根性論的、非論理的、…なもの」として捉えられることも多い世の中ですが、私はそれがとても残念でなりません。そういったものを期待してこのページにいらした方にも、ぜひ一度、心理学の心理学らしい面白さをお伝えできればと思います。
さて、今回は「心のエネルギー」。
心理学では(厳密に言えば、精神分析学では)、心の動きを全てエネルギーの概念を用いて量的なものとして捉えます。そしてそこにはエネルギー論としての法則があります。
たとえば、「エネルギー保存の法則」。物理学で言われるのと同様、心のエネルギーもその個体の中でどのような変化が起ころうとそのエネルギー量は不変であるというもの。たとえば、心が自分を守るためにたくさんのエネルギーを使っていれば、前進的なエネルギーはそれだけ少なくなる、というわけです。この感覚は案外私たち誰もが日常の中で感じることではないでしょうか。自分を守るほうにエネルギーを使いすぎて、自分を表現していくことがなかなか難しくなる…とか。
余計なところにエネルギーを使いすぎず、肝心なところにエネルギーをまわして、効率よく生産的に心のエネルギーを使いたいものですね。
もうひとつ、心のエネルギーに関する法則に触れましょう。それは、「心のエネルギーは他の個体と交換されることによって活性化する」ということ。生物体の細胞は細胞間で物質の交換が行われなくなれば、それは細胞の死を意味します。心のエネルギーも同様です。人は人とエネルギーを交換し合うことによって活性化するのです。心のエネルギーの交換。その最もわかりやすいものが、言語表現であることは言うまでもありません。さてみなさんは、愛情や怒りのエネルギーを言葉にし、大事な人と伝え合っているでしょうか。
ところで、イチロー選手のあの独特のバッティングホーム。あれはとても面白いですね。彼は非常に几帳面に毎回彼独自の決まったやり方でバッターボックスに入り、毎回同じフォームでバットを一振り二振りし、そうしたところで、スッとピッチャーに向けて顔を上げ、バットを上げる。
前半の動き、つまり決まった動きをすることで自分のエネルギーバランスを確認しているわけでしょうが、そこまでならおそらく、実践であそこまでの戦績を残す選手ではないのでしょう。後半の動き、これは、メジャーリーグでも論議になりました。
あれは、彼から大きなエネルギー発信のある動きであるからこそ。そうは思われませんか? 目の前に立つピッチャーに対して、後ろで守る野手に対して、彼からの明確なエネルギーの発信があります。エネルギーが発信されれば、当然、受ける側にはその反応が起こる。実際の投球が行われる前に、既に心のやり合いは始まっているのでしょう。そしてそこで自分を活性化し、そのエネルギーをさらに活かせる選手なのではないでしょうか。
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